学生が選んだ魅力的な経営者

2007年11月 福大ベンチャーブックス


魅力的な経営者


予想もしなかったカツラ業界へ参入

カツラ業界には、テレビCMでよく見かける大手二社のほか、数多くの中小の会社がある。

頭髪に悩む人は多いが、他の商品と違ってユーザーがなかなか表だっては出てこないため、この業界の実態は分かりにくい。

そういう状況の中、宮崎さんはカツラを着用している人とたまたま話したことがきっかけで、カツラの販売に興味を持ち、独自の製造販売システムを構築してこの業界に参入した。

親が自営業だった宮崎さんは、自身も高校生の頃から漠然とではあるが、将来はフリーで専門的な仕事をしたいと思っていたそうである。

会社や留学時代の経験、そして多くの人との出会いを通して、いろいろなことを学びながら自分ができることを一所懸命やり、納得できるものを目指していた。

興味を持ったり良いと感じるものに自分を向けて、勉強を重ねてきた。

カツラの仕事を始めるにあたっても、それまでの知識や経験が、まるでこの仕事のためにあったかのように、しっかりと基盤となっている。


ウイズに至るまでの豊富なキャリア

宮崎さんは東京の大学を卒業後、ある携帯電話会社に就職した。

携帯電話サービス開始の準備段階の頃で、宮崎さんは新卒入社の一期生。

上司も新人と一緒に携帯電話について勉強しながら仕事をしていた。

通信サービスが始まると、技術やサービス内容の進展はめざましく、会社も業界も急成長していく状況にワクワクしていたそうだ。

その後、アメリカの大学に二年間留学し国際政治を学ぶ。

当時、アメリカでは日本より一足早くインターネットの普及が始まっていた。

パソコンの授業があり、インターネットやメールも使っていたが、これが後の仕事に大きく役立つことになる。

帰国後、福岡に戻ってプロバイダ会社に就職した。

ホームページのことを勉強して、平成八年にホームページ作成の仕事で独立、これが宮崎さんの最初の起業である。

会社案内などを作っていたが、パソコン関連会社のネットショップのホームページの立ち上げや運営管理まで任されるようになった。

当時はまだ、ネットショップという販売形態が始まったばかりだった。

宮崎さんは、独立を考えていた頃に出席した起業セミナーで、ボランティアで起業相談にのってくれる元コンサルタントの話を耳にした。

引退した後、社会貢献として若い人に無償でアドバイスなどをしていて、宮崎さんはこの先生が開いている経営の勉強会に参加するようになった。

先生は前述のホームページ立ち上げの仕事を紹介してくれたり、その後も、節目節目の大事なときに宮崎さんはこの先生の助言や指導を仰いでいるそうである。

さて、SOHOという形で念願の独立はしたものの収入も安定せず、今後どのように展開していけばいいのか悩んでいた。

勉強のために異業種交流勉強会に参加したところ、そこでたまたま知り合ったカツラ・ユーザーからカツラが高くて困っているという話を聞く。

数万円から数百万円もかかる場合もあるそうで、ユーザーにとっては日常的な必需品であり、カツラのために働いているようなものだと嘆いていた。

潜在需要は多いはずだが、価格が高いために購入できない人もいるだろう。

「品質が良くてもっと低価格にできれば、ビジネスとして成立する。

人の役にも立てる。

海外への生産委託などでコストを下げられないだろうか」 宮崎さんは、カツラの製造販売について考えてみることにした。

物を売るには、製造・販売.アフターサービスの仕組みが必要である。

今まで全く知らなかったカツラについて調べ、商品特性を考慮して、コストダウンできる方法についてさまざまな視点から検討を重ねた。


全く新しい製造販売システムを構築

カツラは、注文を受けてから一つ一つ製作するオーダーメイドの商品である。

価格を安くするには、まず製作コストを下げることが必須だ。

しかし、じかに頭に装着し、しかも毎日使用するものなので、耐久性はもちろん仕上がりやフィット感などに満足してもらうことが重要である。

「安かろう悪かろう」の技術では困る。

海外で信頼できる製造工場を探すのは難しいことだが、既に中国に製造ルートを持つ理容師と協力関係ができ、この問題はクリアできた。

また、カツラは、製作のためにサイズを測ったりヘアスタイルやカラーを決めることから、完成したカツラの装着・調髪やメンテナンスまで、プロの手が必要な商品である。

しかし、注文がどのくらいあるか分からないのに理容師を自社で抱えるのはコスト面で負担になる。

そこで、理容室や美容室と代理店という形で提携することで、リスクの軽減を計ることにした。

注文が発生すると、注文者の近くの提携代理店に依頼する。

これなら全国どこでも対応できるし、理容室側は規定の技術料が入るほか、ユーザーが調髪やカツラのメンテナンスに来ることで固定客になる可能性が高いというメリットもある。

インターネットで、まず福岡、東京、大阪地区の代理店を募集した。

さて、肝心の販売だが、インターネット上にホームページを開設しネットショップで販売することにした。

今でこそ盛況だが、当時はネット上に店を開くというバーチャルな感覚はなかなか理解しにくいものだった。

しかし、カツラは着用を人に知られたくない商品で、カツラの会社に電話をかけるのは躊躇があるが、ネット上ならば気楽に問い合わせができる。

ネットの持つ匿名性がピッタリの商品なのだ。

さらに、カツラは良いものであっても人に勧めることは少なく、つまりロコミで広まる商品ではない。

個人個人と直接アクセスできるネットショップ自体が、会社にとっても最適の宣伝媒体だった。

「インターネットの便利さをわかっていて、自分でホームページも作れたのが役に立ちました」 アイディアを組み立ててみたら、ツールとして必要な知識や技能は既に宮崎さん自身が持っていたので、実行に移りやすかったといえる。


効果的なホームページ作りや地道な広報作戦

従来のカツラ会社とは異なる画期的なシステムを整え平成十三年秋、ホームページを立ち上げた。

カツラ製作は人件費が安い海外での委託生産、理容師は提携代理店に依頼するので本社で抱える必要はない。

ネット販売のため、受注や発注など全体を統括する本部事務所だけで、ほかに店舗を構えるコストも不要である。

このような効率化によるコスト削減で、他のカツラ・メーカーよりも商品価格を安く設定できた。

二週間後、最初の注文が入った。

ネットショップに対する認知もまだ進んでいないのに、二週問目で売れたことに驚いたそうである。

翌年にウィズを設立したが、事業が軌道に乗ったのは一年半くらいたってからだと言う。

社員を雇ったり代理店の拠点を増やしたりして、徐々に拡充を図った。

注文はほとんどネットからなので、ホームページは重要な営業ツールである。

宮崎さんはホームページ作成の仕事で、分かりやすい説明方法や、ポイントとなる商品をクローズアップして目立たせるテクニックなどの経験を積んでいた。

多数の中からどうすれば検索にかかりやすいかを知っていたことも、ネットショップとして大きな強みになっている。

ウィズのカツラは品質が良くて価格もリーズナブルだが、必要な人にこの情報が届かなければ意味がない。

テレビや新聞などに広告を出すと膨大な費用がかかるので、宮峙さんはパブリシティを活用している。

ユニークな商品情報などをニュース・リリースの形でメディア各社に送ると、世間に知らせる価値ある情報として取り上げてくれることがある。

地道でお金のかからないこの広報作戦によって、ウィズは地元はもとより全国ネットのテレビでもたびたび紹介されており、宮崎さんのおすすめの方法である。

宮峙さんは、ネットショップの勉強会にも出席している。

ネットショップは小さな企業が多く、自社だけで情報収集やノウハウの蓄積を進めるのは大変なので、経営者の集まりが開かれている。

人と会って情報を共有し、お互いに発展していくことが大切だと語る。


無理せずに、マイペースでいい!

ウィズは、「品質の良い商品を適正な価格で提供してユーザーに満足してもらう」という企業理念を掲げ、実践している。

着実に業績を伸ばし、会社は順調だ。

宮崎さんは経営者として頑張っているが、不思議と力みが感じられない。

一所懸命に仕事をしていて、そしてとても穏やかで自然体なのだ。

それは、宮崎さんがあるコラムに書いていた「どちらかというと中庸でいい」という言葉に表れているかもしれない。

宮崎さんは、自分も幸せで、一緒に働いている人も幸せで、お客さまにも満足してもらえるのが一番いいと言う。

無理をして販売を増やしたり、事業を拡大したりすることは望んでいない。

宮崎さんは、一般的に男性経営者は事業拡大を喜びとし、女性経営者は身の丈にあったビジネスをしていると感じるそうだ。

起業について、宮崎さんはこう語る。

「お金をたくさんかける必要はなく、最低限の資金で始めたらいいのではないでしょうか。

少人数で効率的にやっていくことが大切だと思います。

小さな失敗をたくさんしながら、だんだん形ができあがっていくものです」 「勉強は大切。

特に経営の基本をきちんと学ぶことですね。

分かっているようで実は分かっていないことが意外と多いものです。

しっかりした基礎があれば、あとは自分のペースで無理をせずにやっていけばいいのではないでしょうか」 オフィスにはなごやかな雰囲気が漂う。

「会社を大きくする気はあまりないんです。

ユーザーに満足してもらえるように、一所懸命仕事をしてくれる気心の知れたスタッフと一緒に、丁寧に仕事をしていきたい」 カツラの販売を始めて三年たった頃から、リピーターが増えてきた。

カツラは消耗品で買い替えが必要であり、信頼関係ができたユーザーとはずっと付き合いが続く。

ユーザーに感謝される喜びを感じながら、こつこつと息の長い経営をめざしたい、それが宮崎さんの思いである。


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