着脱つれづれ日記4 カツラ・デビューの日

かつらクチコミレビュー ペンネーム:カムーロ見や毛レオさん

●カツラ・デビューの日

レオというネームにはちょっと抵抗がありますが、実際若い頃は会社の飲み友だち先輩たちがレオと名付けてしまいました。

ライオンのように髪があるのに小柄ですから子ライオンみたいだからレオとなったみたいです。

美容室「アルー・アルー」の中原店長さんに教わった通り、サイドの自毛が伸びるのを冬眠していたヤマネみたいにひたすら待っていましたが、とうとう頃は良しと初めてカツラをかぶって外出することにしました。

といっても今住んでいるマンションの周辺や公園をそっと一周しただけです。

すれ違う人が「おやっ?」といった表情をしないだろうか、とか「カツラなんかしてあいつ、バレバレだぜ」なんて笑っていないだろうか、と内心ドキドキしながら歩きました。内心ドキドキ
カツラ・デビューの日

カツラの装着の仕方も慣れないし、鏡で360度確認した訳じゃないし、大丈夫なんだろうかと不安でした。

マンションの周辺を一周しただけなんて、二歳児が「ぼく、おんもに出て来たの」程度のものです。

そのスケールの小ささに笑ってしまいましたが、とりあえず今のところ誰も気が付かないし、何も普段と変わりないのです。

こちらが思うほど他人は何も見ていない、というところでしょうか。もしかてWITHのカツラはそして中原店長の調髪はとっても自然だったからではないか、と思いました。

さてきちんと街に出て、このカツラへのヒトの反応を知りたくなりました。

六本木や青山はまだちょっと気恥ずかしいから、ある日庶民的な新宿に行くことにしました。

こんな時に会えるお気楽な奴って誰だろう、手帳をめくっている内、そうそうこいつ以外にいないなと思える後輩をピックアップしました。学生時代の後輩Yです。

(といっても僕が社会人になった時、彼は大学1年だったがなぜかなついて来るのです)

飲むと大きな声が更に5倍くらいになる陽気な男、大酒飲みのイラストレーターYは以前、飲み屋の主人と喧嘩になり、頭にきたY酒豪夫婦は2階のお店の窓からいっしょに飛び下りて帰ってしまったというツワモノです。

電車に乗り、座らずに立っていました。あっちの人が僕の髪を見てるような気がする。そっと見ると見ていない。ああ気のせいか。こっちの人が僕を見てるような気がする。そっと見ると見ていない。やっぱり気のせいか。きっと誰しも初めての時ってこんな感じじゃないだろうか。

新宿紀伊国屋の地下通路で待ち合わせしました。

行くとシラフの彼は間抜けな顔で立っていました。頭もあごヒゲも半分は白くなったYは僕より4年くらい若いのです。

僕は近付き「よっ!センパイッ!」と手を挙げて声をかけました。

彼は一瞬きょとんとした顔でこちらを見ました。そしてじーっと覗き込みました。

「え、見や毛さん?……えっ見や毛さんですか?!」
「そう、見や毛後輩でございます!」
「だ、誰かと思いましたよ、いや驚きましたよ、どうしたんですか20才も若返って!」

こういう単純な反応をしてくれる正直な奴なんて嬉しいですね。

飲もう飲もうということで3丁目の老舗の和食屋「鼎(かなえ)」ののれんを二人はくぐりました。

大勢でごったがえしているこの店のカウンターに座り浴びるように飲みました。

Yは隣から僕を伺うように見ては
「いやあ、ほんとに若いですよ、見や毛さんじゃないみたい」
「しかし、どっから見てもカツラだなんて全然分からないですね!」

ちょっと声がでかすぎるが、許してやろう、今日のモニターだと思えば楽しい。

カウンターの店の主人は目の前で「カツラ、カツラ」とYが言ってるのに全く無反応で黙々と惣菜を作っています。

客に対する配慮が身についているか、そんな話題に全く興味がないか、でしょう。

二人は大いに飲み続け食べました。

ああ、いい気分だ、ああカツラしてよかったなあ。

やがて隣で横顔を見ていたYが突然、店の主人もびっくりするような大声を発しました。
「見や毛さん!別の人と飲んでるみたいで気持ち悪いですよ、いつもの見や毛さんじゃない、黒すぎますよ髪が!」

いつもの見や毛さんじゃないなんて大きなお世話だ。身も心も別人を演じているんだから当たり前じゃないか。

でも今この酔っぱらいが言った率直な感想は参考にしようと、忘れない内にこっそりトイレで次のように一言一句「正確に」メモしておきました。


Y曰く
『いつものさえないハゲの見や毛さんはどこに行ったんですか、20才も若返ってこんなに素敵な見や毛さんと飲んでいるとつい青春時代、学生時代を思い出してしまったじゃないですか!でもどうして見や毛さんだけがカッコよくなるんですか、ずるいですよう、ねえ、ねえってば!』


このあとブルースの店に行きました。10年ほど前フィンランドからの客人のリクエストで入ったことのある真っ黒い小さなバーです。

和風びいきの江戸っ子「Y」には似つかわしくないが、この際アルコールがあればどこでもいいやって感じでした。

若者の店ですから飲んでいる人はほとんど20~30代です。

BBキングのブルース(LPレコード)を聴いていると若い女性がひとり入ってきました。

カウンターで飲んでいる我々の後ろを通り過ぎながらどこに座ろうか、隣に座ろうか迷っている感じが背後に分かりました。

ハゲの時にはまずありえないことです。こんな時は恐らくラテン系の女性でない限り、ためらうことなくハゲ男を避けて遠方に進むのです。

それが今夜は客がまばらなお店だし、奥のほうはほとんど空いているのに、僕たちの背後で美しい女性が座る場所を迷っているのです。これは重要なことなんです。フェロモンを感じたんです。僕はバカ中年ですか?

こんなこと何年もありませんでした。僕らはとってもシャイですからもちろん知らぬふりして耳ではブルースを聴き、背中はすっかりパラボナアンテナになってうしろの動静を感受していました。

女性は少し離れたテーブルを見つけてつつましく座ったようでした。

僕らはこの後、ゴールデン街でITベンチャーの社長C君と合流しはしごをしました。後で聞くとこの夜全部で安い店ばかり7軒飲み歩いたことになります。

Yは紙片に何か描き始めました。

(1)のイラストが機嫌よく飲んでいる最初の僕です。
カツラデビューの夜 自然な毛の流れ

やがて(2)のように前髪が束になって「八」の字になっていてこれは不自然だという。
カツラデビューの夜 毛の流れに反する

成る程鏡を見ると長い前髪が束になっていました。
装着ビギナーなんだからそういうこともあろう、さっそく洗面所へ直しに入りました。

中原店長さんのアドバイス「カツラはクシでとかしてはいけません。必ず自分の指をクシ代わりにして下さい」を思い出し、そのようにしました。うまく行きました。

以後今日まで「八」の字になったことはありません。
何でも経験ですね。

(3)は酔いつぶれて寝ている僕の想像画だそうです。
カツラデビューの夜
酔ってこのようにならぬよう

やがてある店で飲みながら、僕はぱっとカツラをはずしてママさんや客の皆に見せてやりました。そのあまりのイメージの急変に皆、唖然とし、またこのカツラの精巧さにびっくりしていました。

(すかさず「これはWITHというメーカーの…」とPRを忘れませんでした)

得意になっているそんな時、いつか聞いたことのあるメロディーがずっと聞こえるので何だろうなと思っていたら、めったに鳴らない僕の携帯電話でした。

「いつまで飲んでるのっ!何時だと思ってんの!」

かみさんの声でした。時計を見ると朝の5時15分でした。

アルコール漬けのカツラデビューの夜でした。


見や毛レオ
カツラユーザーカムーロ見や毛さん
お気楽かつら・カムーロ見や毛さん


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