人生楽しむお手伝い

2009年5月20日 毎日新聞

7年前にインターネットによる低価格のオーダーメードカツラ販売を始め、年商1億円企業に成長させた。

顧客は幼児から高齢者まで幅広い。病気やけが、加齢など、脱毛に悩む人の事情は千差万別。

「少しでも人生を楽しくするお手伝いができたら」と願う。

同社のカツラは14万8000円から。大手の5分の1以下だ。

事業を始めて1週間で1個目が売れた。

カツラは服や靴と同じ消耗品。汗や汚れで劣化するため、耐用年数は3年程度。

利用者にとって買い替えの負担は重い。これまで育毛剤や増毛施術も含め、1000万円使ったという40代男性は「これからは趣味にお金が使える」と喜んでくれた。

低価格の秘密は徹底したコスト削減にある。商社を通さず、直接海外の工場と交渉して、中間マージンが発生しない仕組みを作った。

オフィスは福岡市南区のマンションの一室。店舗は持たない。ネットで商品を紹介し、全国16都市で提携する理美容室を通じて注文や採寸を受ける。

出来上がったカツラを理美容室に送り、その店で顧客の好みのデザインにカットし、納品するシステムだ。

独自店舗を持った場合の経費が不要で、美容室にとっては新規顧客開拓の機会になるとい う。

95年までは、地元のインターネットプロバイダーで企業向けのホームページ作成を請け負っていた。しかし、安価なソフトや競合相手が次々に現れて価格競争が激しくなってきた。

「安定した仕事で独立したい」と考えていたころ、知人から「需要は必ずあるよ」とカツラ販売を勧められた。しかし、カツラなど手に取ったこともない。

迷っていた時、病気で脱毛したため、カツラを10年近く使っていた友人の妹から「安くていいものを売ることができるなら、ぜひあなたがやってほしい」と言われて、心を決めたという。

顧客の半分は女性。「人が集まるところに出ていけるようになった」「抗がん剤治療をがんばろうという気持ちになった」といった手紙をもらうたびに「もっと頑張らなくてはと励まされるんです」。